『日本酒』について
意外と知られていないようですが、愛知県にはたくさんの清酒製造蔵が存在しています。年間製造量も常に全国10位前後にあり、全国に日本酒マニアに高く評価されている蔵も少なくありません。
<愛知の酒蔵と代表銘柄>
調べうる限りでは、県内の清酒製造蔵(自家醸造をしている蔵)は54場ありました。
所在地は水との関わりが強いものだけあって、三大河川(木曽川、矢作川、豊川)に近い地域を中心に、県内のほぼ全域に分布しています。
名 古 屋 市 内
所在地 酒造会社名 代表銘柄
北区 白龍酒造 白龍(はくりゅう)
北区 金虎酒造 金虎(きんとら)
守山区 東春酒造 東龍(あづまりゅう)
緑区 神の井酒造 神の井(かみのい)
緑区 山盛酒造 鷹の夢(たかのゆめ)
緑区 万菊本店 万菊(まんきく)
緑区 萬乗醸造 醸し人 九平次(かもしびとくへいじ)
中川区 常盤醸造 常盤(ときわ)
尾 張 地 区
所在地 酒造会社名 代表銘柄
犬山市 小弓鶴酒造 小弓鶴(こゆみつる)
犬山市 東洋自慢酒造 東洋自慢(とうようじまん)
江南市 山星酒造 星盛(ほしざかり)
江南市 丸井 楽の世(らくのよ)
江南市 山一酒造 勲碧(くんぺき)
一宮市 金銀花酒造 金銀花
稲沢市 藤市酒造 尾洲ことぶき(びしゅうことぶき)
津島市 長珍酒造 長珍(ちょうちん)
津島市 鶴見酒造 神鶴(かみつる)
祖父江町 内藤醸造 木曽三川(きそさんせん)
佐織町 水谷酒造 千瓢(せんぴょう)
佐織町 渡辺酒造 平勇(ひらいさみ)
佐屋町 山忠本家酒造 義侠(ぎきょう)
佐屋町 山忠新家酒造 雲井(くもい)
佐屋町 青木酒造 米宗(こめそう)
蟹江町 甘強酒造 四天王(してんのう)
蟹江町 山田酒造 酔泉(すいせん)
師勝町 東海醗酵工業 四君子(しくんし)
清洲町 清洲桜醸造 清洲桜(きよすざくら)
知 多 半 島 地 区
所在地 酒造会社名 代表銘柄
半田市 天埜酒造 初夢桜(はつゆめざくら)
半田市 中埜酒造 國盛(くにざかり)
常滑市 白老酒造 白老(はくろう)
常滑市 ねのひ ねのひ
東浦町 野村酒造 幸娘(さちむすめ)
東浦町 原田酒造 生道井(いくぢい)
阿久比町 丸一酒造 冠勲(かんくん)
南知多町 内田酒造 富好(とみよし)
三 河 地 区
所在地 酒造会社名 代表銘柄
碧南市 相生酒造 相生盛(あいおいさかり)
碧南市 永井酒造場 昇勢(しょうせい)
碧南市 笹娘酒造 笹娘(ささむすめ)
碧南市 旭酒造 八重桜(やえざくら)
安城市 神杉酒造 神杉(かみすぎ)
岡崎市 威光醸造 家康の里(いえやすのさと)
岡崎市 丸石醸造 長誉(ちょうよ)
豊田市 浦野 菊石(きくいし)
豊川市 白井醸造 姫街道(ひめかいどう)
豊橋市 福井酒造 四海王(しかいおう)
豊橋市 伊勢屋商店 公楽(こうらく)
蒲郡市 竹内酒造 養神(ようじん)
新城市 日野屋商店 朝日嶽(あさひだけ)
幡豆町 山崎 尊王(そんのう)
額田町 柴田酒造場 孝の司(こうのつかさ)
東栄町 森山酒造 蜂龍盃(はちりゅうはい)
旭町 中垣酒造 賜冠(しかん)
設楽町 関谷醸造 蓬莱泉(ほうらいせん)、明眸(めいぼう)
三好町 旭化成工業名古屋工場 菊の世(きくのよ)
<愛知県の酒造りの歴史について>
愛知県は木曽川や矢作川水系の良質な伏流水に恵まれ、また、濃尾平野一帯は穀倉地帯として古くから良い米が栽培されているなど、酒造りには十分な条件が備わっていました。
愛知県における酒造りに始まりは、遷都と共に酒造りの場が朝廷の直轄から神社や寺院、さらには民間へと移り変わって行った鎌倉時代の頃ではないかと推察されています。
江戸時代後期には尾張藩による酒造りの保護・奨励や知多半島沿岸での海運業の発達による輸出体制の確立、一大消費地・江戸での高需要などにより、知多半島を中心に酒造業は大いに繁栄し、一時は灘地方に迫る勢いであったと言われています。
しかし、明治以降は日本各地での新興醸造地の台頭や技術革新を得た灘酒の巻き返し、さらには度重なる税制改革などの影響により愛知の酒造りは衰退の一途を辿ります。
その後も、大正〜昭和の世界大戦、戦後の灘・伏見のナショナルブランドの席巻、さらには高度成長期以降の食文化の欧米化に伴う日本酒離れ…と、現在も厳しい時代が続いているようです。
<日本酒の種類について>
場末の居酒屋(意外と大手居酒屋でも…)でドリンクメニューを見ると、堂々と『日本酒一合 ○○円!』と書いてあったりしますが、5000種類はあると言われている日本酒の銘柄のうちの一体何を指しているのでしょうか?まさに恐怖のメニューです。
日本酒の種類分類は確かにわかりにくく不可解な部分も含みますが、ある程度は理解していた方が良いと思います。だって日本人だから…。

日本酒には大きく分類して以下の7つがあります。
 1.純米酒
 2.純米吟醸酒
 3.純米大吟醸酒
 4.本醸造酒
 5.吟醸酒
 6.大吟醸酒
 7.普通酒


さて、少し乱暴な手法ですが、これらをズバリ添加物の有無で分けてしまいます。
 T.添加物なし…純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒
 U.添加物あり…本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒、普通酒


お気づきになったかも知れませんが、添加物のない日本酒には「純米」という名称が付いています。
 ※お断り:日本酒に造詣の深い方の中には添加物という呼称やこの分類のしかたに対して「添加物の内容や使用意義、歴史的背景等を考慮せずに、誤解を招くようなことをすべきでない!」とお怒りの方もいらっしゃるかも知れません。が、後に述べる、ラーメン作りにおける厳密な意味での「無化調」に関わる問題なので、ここではどうかご容赦下さい。

@純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒について
まずはこの3つから。この3者の原材料を見てみると「米、米こうじ」と書かれてあります(ビンに貼ってあるラベル片隅をご覧下さい)。米はもちろんお米のことです。米こうじとは蒸した米に麹菌(こうじきん)を発育させたものです。
詳細な製造方法はややこしいので省略させていただきますが、要するに酒造りとは、お米を麹菌と酵母菌の作用によって発酵させアルコールを作り出すということです。3者とも基本的な造り方は同じです。
では何が違うのかというと、それは使用するお米の削り具合(精米歩合)です。
一般に酒造りにおいて、お米はその外側ほど雑味のもととなる成分(蛋白質、脂肪等)が多く含まれています。従って美味しいお酒を造るには精米、つまりお米の外側をある程度削るという前処理が必要となるわけです。
この精米歩合によって3者は分類されます。(厳密にはこれ以外の要素も含まれますが、ここでは省略させていただきます)

 ・純米酒の規格    …精米歩合70%以下のもの(外側を30%以上削ったということ)
 ・純米吟醸酒の規格 …精米歩合60%以下のもの(外側を40%以上削ったということ)
 ・純米大吟醸酒の規格…精米歩合50%以下のもの(外側を50%以上削ったということ)

   ※精米歩合とは精米(削る前のお米の重さに対する、削り終えたお米の割合を指します)

ちなみに、精米歩合という観点からは、削る割合が多いほど高級酒と言えるかも知れません。では、削るほど美味しいのか?と聞かれると、そこは必ずしもそうだと言い難い部分もあります。人の嗜好は千差万別で、大吟醸酒のような雑味のない透明感のある繊細でスッキリした味が好みの人もいれば、雑味が潜んで複雑な味わいで米そのものに近い風味が好みの人もいるようです。きっとそこが日本酒の奥深いところなのでしょうね。

で、まとめますと、微生物の力を活かしてお米と水のみから造りあげた昔ながらのお酒が純米酒であり、精米歩合により吟醸規格の純米酒、大吟醸規格の純米酒が設けられているということです。

A本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒、普通酒について
この4者を同じ仲間として括るにはちょっと無理な部分もありますので、さらに二つに分けさせていただきます。

a.本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒について
これら3者には何が添加されているのかというと、それは『醸造アルコール』というものです。醸造アルコールとは早い話、人工的に製造したエチルアルコールのことです。
日本酒はそもそもお米を発酵させてアルコール分を出させたものなのにナゼにわざわざ醸造アルコールなるものを添加するのか?と言うと、純米酒のやや重い飲み口をライトにする、あるいは、揮発していく香りを留まらせておくことができる…等の意義があるそうです。これに対する受け止め方は愛飲家の間でも様々なようですが、業界では認められている製法であることは事実です。でも、ここでは敢えて添加物と考えたいと思っております。
もちろん醸造アルコールの使用量には規制があり、入れ放題というわけではありません。良心的な多くの蔵元では目的を果たすために必要なごく少量の使用に留まっているようです。
さて、この3者も精米歩合により規格分類ができます。

 ・本醸造酒の規格  …精米歩合70%以下のもの (+醸造アルコール)
 ・吟醸酒の規格   …精米歩合60%以下のもの (+醸造アルコール)
 ・大吟醸酒の規格  …精米歩合50%以下のもの (+醸造アルコール)


b.普通酒について
普通酒とは、これまで述べてきた純米酒や本醸造酒等の規格に当てはまらない全てのお酒の総称です。
使用するお米の精米歩合が高かったり…、添加する醸造アルコールが本醸造の規格以上であったり…、お米の質が悪かったり…、と基本的には低コストを目的に作られたお酒のこと、と言ってしまってもよいでしょう。
当然のことながら、そのままでは決して良い味とは言えません。だからこそ醸造アルコールを添加し、高くなったアルコール度数を下げるために水で薄め、さらには酸味料やアミノ酸、糖類を添加して味を整えるという操作が必要となります。
現代の大衆酒、廉価酒のほとんどはこれに該当します。
(しかしながら、ごく稀に例外もあるという事実もここにお知らせしておきます。念のため…)

<ラーメン作りにおけるポジション>
ず〜いぶんと長い前置きになってしまいましたが、ご存知の通り日本酒はラーメンのスープ作りにおいて一調味料として用いられます。醸造酒である日本酒にはアルコール以外にも発酵の過程で生まれたアミノ酸や糖類などの様々な成分が含まれています。もちろん直接スープの味に影響するものではないでしょうが、隠し味的な存在であることは間違いないでしょう。
また、日本酒に含まれるアルコール分は素材の持つ臭みを緩和する作用もあります。

不思議なことに、こだわりの食材の数々を掲示しているお店で、使っている日本酒に関しての情報を目にすることはあまりありません。ナゼなのでしょうか?(味の決め手とは縁遠いから?)
しかし、店主すら気づかずに化学調味料がバンバン入った安酒を平気で使っていながら無化調を謳っているお店なんて……ないですよね!?
もちろん、本醸造酒等に入っている醸造アルコールを化学調味料の範疇に入れて考えるが否かは議論の分かれるところですが…

<番外編:日本酒にまつわる錯覚>
これまで述べてきたように日本酒には様々な錯覚が存在しています。追加事項も含めて整理してみましょう。

錯覚@ 「本醸造」という呼称の不明瞭さ
 本醸造の「本」とは一体何のことなのでしょう?もし、何も知らなければ「本物、本当、本来、本格的…」と思ってしまうのではないでしょうか?
 しかし、前述の如く、どうやら本物、本当で、本来あるべき姿のお酒は純米酒(純米吟醸酒、純米大吟醸酒)と考えた方が自然なのではないでしょうか。

錯覚A 「普通酒」という呼称の不自然さ
 これほどまでに逸脱した作り方のお酒なのに、どこが「普通」なのでしょうか!?普通でない作り方なのに普通酒と名付ける真意が理解できません。

錯覚B 「純米酒」=「米だけの酒」ではない
 醸造アルコールを添加しない、酸味料やアミノ酸、糖類を添加しない。しかし、お米はあまり削らない(精米歩合71%以上)で作ったお酒。確かにこれは純米酒と呼べません。しかし、言い得て妙ですが「米だけの酒」には違いありません。でもこれって屁理屈のような気がしませんか?
 とにかく表記方法に関する規制が曖昧で、消費者の立場に立って見直されていないということだけは事実のようです。

錯覚C 「金賞受賞酒」とは?
 「酒鑑評会で金賞を受賞しました!」などと聞かされると、その酒蔵のお酒はどれも美味しいだろうと思わず想像してしまします。でも必ずしもそうとは言えません。なぜなら賞を獲得したお酒は受賞を目指して造られたお酒だからです。「受賞酒」であれば、間違いなく最上級のお酒と言えるかも知れません。しかし、その蔵で造っている一般用のお酒すべてが評価されたものではないということは頭の片隅に置いておいた方がよさそうです。


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